旬感・千年北海道

青函トンネルを抜けて広がる、北の9都な物語

秋の奥尻を満喫(後編)

「訪問日:2020.10.28

海の魅力を思う存分楽しめる奥尻島は、美しい森林も豊富です。

島北中央にある「奥尻21世紀 復興の森」。

そこで広大なブナの原風景が広がり、自然の恩恵を受ける生き物が暮らしています。小さい花を沢山咲かせる春、深緑が稜線を包む夏…そして、10月下旬、そこでは圧倒的な秋色に出会うことができました。

▼心を惹きつけている秋の「復興の森」

復興の森は、震災後復興事業に従事された建設業者が島の復興を祈念し、整備しました。四季の移り変わりを鮮明に感じられるこの森は、現在は散策コースにもなることからとても人気のある観光スポットです。

▼澄んだ青い空に色鮮やかな葉を持つ美しいブナの木々

この辺では、タヌキなどの小動物はよく見かけますが、クマや毒ヘビなど危険動物はいないので、子供でも気楽に立ち寄れます。

駐車スペースのすぐ近くにある復興の森の象徴と言えるログハウスは、自然教育の場として利用されています。

▼ログハウスを囲む木々が赤や黄色に色づき、周囲を秋色に染めっています。

実は、奥尻島の大部分は深い森に覆われ、南と北の植生が共生する珍しい環境になっています。また、島の深い森林は豊富な水を蓄える役目をしているので、奥尻には水が涸れることがありません。奥尻島では美味しいお米やタケノコ·ギョウジャニンニクなど山菜を収穫できることや、ぶどうの栽培からワインの醸造まで全て行っているワイナリーがあることは、森のおかげなのかもしれません。

そしてもう一つ、島の自然が育てた食材を語る上では外せないのが「海の幸」です。「海の幸」と言えば、一番有名なのはやはり「ウニ」ですね。その中で、もっとも代表的な種類は「ムラサキウニ」ということです。奥尻産のムラサキウニは味が濃厚で、臭みがなく食べやすいのが特徴だと言われています。奥尻の名産ムラサキウニをかたどったモニュメントが設置されている「うにまる公園」に行ってきました。

「うにまる」とは、奥尻島のマスコットキャラクターです。ウニの中身のような黄色で、島民に「うにまるくん」と呼ばれています。タイミングが良ければ、フェリーの発着時間に合わせてフェリーターミナルに現れ、島に訪れた人のお出迎えやお見送りをしています。

▼うにまるくん

(画像提供:奥尻町役場)

うにまる公園にあるモニュメントは、「うにまるくん」の可愛らしい造形とは違い、高さ13メートルにも及びます。一見普通に見えますが、夜になるとウニのトゲを模した120本の突起がライトアップされ、海上の漁火とともに星空のように幻想的に浮かび上がります。

▼うにまるモニュメント(昼間)

▼うにまるモニュメント(夜間)(画像提供:奥尻町役場)

ちなみに、うにまる公園には「うにまる」キャラ像が付いているモニュメントもあります。

▼こちらです。でも、これは一体何のために作られたのでしょう。

実は、これは21世紀へのメッセージを収納した保管収納庫です。

奥尻町では、「平成元年タイムカプセルうにまる事業」として、1989年(平成元年)6月から1990(平成二年)年3月にかけて全国から21世紀への愛のメッセージをここで預かり、2001年(21世紀)と2009年(1989年から20年後)に指定された方へ届けました。しかし、その後、あて所不明で返送された分が相当数あるそうです。もしこの訪問記を読んで思い出しましたら、ぜひ奥尻町役場までご連絡ください。

◆「タイムカプセルうにまる」に関わるお問い合わせ先

  • 奥尻町役場 地域政策課政策推進係
  • 電話01397-2-3403 FAX 01397-2-3445
  • 奥尻町字奥尻806番地

 

ウニの話に引き続き、もう一つの奥尻島自慢の特産品は奥尻ワインです。海に囲まれている奥尻で育ったブドウは、潮風を受けていたため、ミネラルが豊富で、ワインにするとその余韻に潮の香りが出るそうです。

そういう独特なワインを生産する奥尻ワイナリーに立ち寄りました。

奥尻ワイナリーでは、前日までに予約をすると製造工場内の見学ができます。今回はあいにく、生産ラインが作動中で工場見学できませんでしたが、2階の窓から工場の様子が見下ろせました。

▼窓から工場内のタンクがはっきり見えます。

工場2階にある販売店で工場限定発売品が試飲できるということで、いくつかのワインを飲みました。店員さんからのご紹介によると、一番人気があるのはメルロー(ロゼ)2017でした。ブドウの香りが深く、軽く心地よい酸味と繊細なタンニンが感じられ、口当たりがやわらかくバランスの良い辛口ロゼワインで、オススメです。

▼工場内の販売店では工場限定品の購入や地方発送もできます。

工場限定のワインのほか、ワインケーキも販売しています。上質なケーキに奥尻メルローワインの香りが染み込んでいて、しっとりとした食感で非常に美味しかったです。

▼奥尻ワインケーキ

ワイナリーから出たのは午後4時過ぎで、外はもう薄暗くなってきました。しかし、秋の奥尻ではこの時間からでも体験できることがあります。

「虹色サンゴ」の加工体験です。

虹色サンゴとは、奥尻島沖水深300メートル付近で水揚げされた希少な深海サンゴです。古くから漁師の間では「深海松」と呼ばれ、縁起物として重宝されていたそうです。

加工というのは、このサンゴの「原石」を虹色に見えるまで磨いて、綺麗に磨いたら金具·ぶらさげ糸を結んでキーホルダーやネックレス·ボールペンなどを作ります。

▼未加工の「虹色サンゴ」は本当に松の木のようですね。

加工の流れは大体同じです。まず、サンゴの「原石」から自分が好きな模様と形のものを選びます。次に、紙ヤスリや磨き粉でヤスリをかけます。その後、職人さんに艶出しや仕上げをしてもらって、完成となります。最初から最後まで職人さんが丁寧に教えてくれるので、どんな方でも安心して体験できます。

今回はネックレスを作ることにしました。自分の手で木のようなものを「宝石」へ変えることができて、本当に不思議でした。ネックレスチェーンは[延縄]という漁の時に使うひもで、島スタイルを感じることができました。

▼これは完成品です。こんなに綺麗な虹色が出てきました。

ネックレス加工の所要時間は約1時間30分で、料金は1800円でした。加工品の種類や材料の太さなどにより時間や料金が変わりますので、詳細は虹色サンゴ·加工工房までお問い合わせください。

◆「虹色サンゴ」加工体験についてのお問い合わせ先

  • 離島仙人(代表)枝松寛次
  • 電話:090-2874-9484
  • 奥尻町字奥尻19-8

いよいよディナータイム。今回の奥尻訪問の〆は、フェリーターミナルから徒歩10分、コスパも味も抜群のお寿司屋さん「叶寿司(きょうずし)」での夕食です。

まだ18時なのに、店内は賑わっていて、大人気ですね!

メニューはとても豊富で、にぎり·巻物·刺身はもちろん、お寿司屋さんの印象には似つかわしくない焼き餃子も提供し、しかも人気メニューだそうです。また、奥尻の米と水で醸した純米酒や奥尻ワインも味わうことができます。

▼季節の奥尻の味が凝縮されている刺身盛り合わせ。見た目も味も盛りも大満足!

▼地元の方におすすめの鉄火巻き。見た目はシンプルですが、味はとても繊細です。

人気店のため、事前予約がおすすめです。また、食べられる食材は時期により異なりますので、予めご確認ください。

◆叶寿司(きょうずし)

  • 奥尻町字奥尻766-11
  • 営業時間;17:00-23:00 昼食営業11:00-13:30(夏限定)
  • 電話;01397-2-3340

秋の奥尻での旅、あっという間に終幕しました。鮮やかな山、穏やかな海、旬ならではの味…昔から現代までの島の物語と巡り会えました。

また来ます!

※本ページ記載の情報は取材時点のものです。

 

前編はこちら http://1000nen-hokkaido.com/?p=12264

中編はこちら http://1000nen-hokkaido.com/?p=12283

 

 

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