旬感・千年北海道

青函トンネルを抜けて広がる、北の9都な物語

『藩主料理』でお殿様気分♪

【訪問日2017/10/7】
松前町の老舗旅館「温泉旅館 矢野」で看板メニューの『藩主料理』を頂いてきました。

その名の通り、松前藩の「藩主」が実際に食したという料理を再現したもので、松前らしさを味わうのならばいつかはと思い続けていました。その願いが遂に実現したのです。

そして出てきたのがこちらの御膳 ▲

幕末頃の14代松前藩主である松前徳廣公。そのご婚礼時の文献を元に再現したお膳で、北前船交易で繁盛していた松前藩の特徴がよく現れているそうです。

▲ 藩主料理の説明してくれたのは若女将の杉本夏子さん(着物姿の方)。津軽海峡を挟んで隣り合う道南と青森において、女性有志が立ち上げた地域活性化団体「津軽海峡マグロ女子会」(外部リンク)の一員でもあり、道南エリアでは有名人です。

その説明によると、ご膳の中のお料理一つ一つに松前の歴史と文化が詰まっているそうです。その内のいくつかをご紹介していきましょう。

▲ 「寄せ豆腐」

蝦夷地に位置する松前藩は当時の幕藩体制では北の外れでしたが、実は「北前船」による交易を通じて上方と直接結びついていました。つまり、上方の産物と共に、京や北陸地方などの文化や風習も伝わってきていたのです。

寄せ豆腐はその一つで、松前では現在でも郷土料理の一つとして根付いているそうです。

▲ ニシン・数の子・果物

ニシンは前述の北前船交易で蝦夷地からの主要産物でした。ですが、食物としてではなく「ニシン粕」、つまり木綿栽培などの肥料として出荷されていました。このニシン交易で大いに儲かった結果が、現在も江差など日本海沿岸の各地に残る、いわゆるニシン御殿ですね。

果物は、今回はオレンジですが、当時はミカンなどが用いられたそうです。

実はこのミカン、北前船とは異なるルートで運ばれていたのですが、そのくだりは若女将から直接教えてもらうのが良いでしょう。「さすがお殿様!」と同席者が皆感嘆した程です。

▲ 「けいらん」

前述の寄せ豆腐とは異なり、こちらは南部地方から伝わったものです。南部とは、ざっくり言えば、現在の青森県の東半分と岩手県の北半分の辺り。主に木こりなど林業に携わる人々が蝦夷地へ移住したそうです。

「けいらん」はあんこ等が中に入った餅で、鶏の卵、つまり鶏卵(けいらん)のような形をしています。それをお吸い物に入れ、冠婚葬祭等の様々な場面で供されたそうです。

▲ 「あわびご飯」

贅沢にも大振りなアワビが丸ごと入っています。いわゆる高級食材である「蝦夷あわび」ですね。松前は蝦夷あわびの産地の内の一つとなっています。

▲ 「くじら汁」

松前など道南の郷土料理と言えば、やはり「くじら汁」でしょうか。正月になると、どの家庭でもくじら汁を作って祝うという具合です。

そこに松前ならではのエッセンスとして「エゾにお」という野草を加えているそうです。

▲ 「松前漬け」

やはり松前と言えば「松前漬け」は外せないでしょう。さらに、ここ温泉旅館矢野では女将と若女将がそれぞれ異なる味付けで手作りしており、お土産品としても人気ですね。

 

お膳の中のお皿それぞれに松前藩政時代からつながる歴史文化が込められており、それはもう十二分に松前を堪能することができました。

そして松前のお殿様は、北の外れの地と言えど、ハレの日にはこんな豪勢なお料理を召し上がっていたのですね。北前船交易で栄えた松前藩の実力の一端を垣間見ることができたかも。

 

尚、この藩主料理は外食のランチやお泊りの夕食として注文可能ですが、前日までの予約が必要となっています。

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※本ページ記載の情報は取材時点のものです。