翌朝、窓から差し込む朝日を感じ、自然に目が覚めたのは7時でした。部屋からちょうど朝日を浴びながら徐々に出港するフェリーの姿が見られ、島の雰囲気にどっぶり浸ってきました。
▼朝日を浴びながら出港するフェリー
天気がとても良かったので、素晴らしい景色が見られる予感!早速球島山展望台に。
球島山は奥尻島北部にあり、標高369.3mで奥尻で3番目に大きい山です。周りには視界を遮るものがほぼないので、秋のシーズンには山頂の展望台からオレンジ色に染まった紅葉が一望でき、本当に清々しい気分になりました。
▼球島山展望台から秋の奥尻360度の展望が楽しめます
また、天候と時期により、ここで星空観察やイカ釣り漁船の漁火観賞もおすすめです。
駐車場から展望台まで僅か数十段の階段があり、どなたでも気軽に立ちよれます。
奥尻港から球島山へ行く途中で牛の放牧が見ることができ、5月には島民から「櫻木線」と呼ばれる1500本以上の櫻並木も楽しめます。
次にもう一つの絶景ビュースポットへ。
海から突き出た岩山に建設した宮津弁天宮、直下には宮津地域の街並みや漁港があり、対岸には北海道本島が見え、天然の展望台となっています。
▼奥尻島北部の弁天岬にある宮津弁天宮
社殿まで164段の急階段が設置され、駐車場から手すりに掴まりながら一旦下がって更に上り、頂上に向かって行ってきました。少し大変でしたが、登っているうちに周りの景色が変わってきて、なかなかの秘境感!
▼宮津弁天宮社殿(外部)
やっとお社が現れました。この神社は文政年間(1818~1829)に、宮津地域の漁民によって海上安全と豊漁を祈願して弁財天と呼ばれる福の神が祀られました。島内最古の神社として、また景勝地であることで、奥尻町指定文化財となりました。鮮やかで古風な朱色の社殿、薄黄金色に染まった岩山、潮風を感じながら一望できる青海原…奥尻で深い歴史と雄大な自然両方とも感じられる場所と言えば、やはりここです。
▼宮津弁天宮社殿(内部)
ちなみに、以前、この辺りは「茶津」と呼ばれていました。何故かと言うと、この岩山には、古くは9世紀頃のオホーツク文化の遺跡や、16世紀~17世紀頃のアイヌの砦(チャツ)が築かれていたと考えられます。その「チャツ」は「茶津」の語源になったと言われます。
いよいよ、奥尻の代表的な名所となる鍋釣岩に行ってきました。
囲炉裏で使う鍋の弦に形が似ていることが名の由来で、自然に形成された奇岩です。晴れた日で少し白っぽく見えましたが、実はこの岩は黒曇母などの入った岩類ということです。地元の方に裏話を聞くと、この高さが19.5mで巨大な「ドーナツ」はもともと黒っぽく、中央部の洞も違う大きさに見えるようになっていました。1993年の北海道南西沖地震と津波によって、沖側の部分が崩落したために約一億円をかけて補修を行ったそうです。鍋釣岩の表情は少し変化してきましたが、その姿から島にまつわる物語に出会うことができました。
▼目の前に広がる圧巻の青い海を眺めながら、優しい潮騒に包まれ、気持ちが良かったです
また、訪ねたその日の天候や時間帯、季節の違い、見る者の気分…それらが相まって、岩の様々な表情を楽しめるのは奥尻旅行の醍醐味の一つです。朝日の時間を狙って行くと鍋釣岩の海蝕洞越しに昇る朝日を臨むことができ、夜になるとライトアップされ、漁火も同時に見ることができます。
お昼の時間になりました。島人に人気の定食屋「お食事処 潮騒」でランチ。
海鮮あんかけ焼きそばがおすすめとのことで頼みました。周りを見ると、やはり「あんかけ焼きそば」は約半分のお客さんが注文している人気メニューですね。さっぱりとしていた塩味のあんが食材の旨味を引き立ち、海鮮や野菜に相性ぴったり!焦げが少しつくほどパリパリの焼きそばも美味しかったです。ボリュームがあり、大食いでも満足できます。
▼大人気の海鮮あんかけ焼きそば
丼物定食に付く汁物は普通の味噌汁ではなく、奥尻島の郷土料理「三平汁」でした。三平汁とは、塩漬けされた魚と野菜を煮込んだ汁物です。嵐に遭い奥尻島に漂着した松前藩祖・武田信広に、島民の三平が塩蔵ニシンと貯蔵野菜の汁を作ってご馳走したのが「三平汁」の始まりと言われています。潮騒の三平汁は鱈、大根、人参、ジャガイモが入っています。シンプルに見えますが、各食材の味を最大限に活かすというこだわりがあり、素朴で味わい深い感じです。
▼焼肉丼定食に付く「三平汁」
5月のゴールデンウイーク頃から8月末くらいまで、ウニ丼も提供しています。
(後編に続きます)